婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

(あぁ、どうして私はいつも何もできないの……料理だけじゃなくて光魔法が使えたら良いのに。みんなを、守りたい……!!)


 自分に出来ることは少ないと、これまで何度も思ってきた。でも、それで全てを投げ出してしまってはお終いだ。

 もう全てが乙女ゲームのシナリオからかけ離れているけれど、ここで諦めてしまってはダメなんだ。


 自分を奮い立たせて立ち上がる。サタンに対して得意な水魔法を当てようと、手をかざした時だった。
 過去に魔力を放出した時と同じように、手からキラキラと光の粉が溢れ出していた。


「あぁ、君だったのか。本当の敵は」
「え……?」


 どういう意味かと考えている瞬間、真っ黒な光線が私目掛けて飛んでくる。今まで見たことがないような、恐ろしい威力と鋭さを伴って。


(あぁ、もうダメかもしれない)


 そう思ってぎゅっと目を閉じる。その直後に体がバンッ!! と飛んでいったーー。


 ふと目を開けると、先ほど私が立っていた場所にカイ様が倒れていた。


「カイ様!!!!!!」


 私がサタンの攻撃を受ける直前、体を突き飛ばしたのはカイ様だったのだ。

 そして横たわる彼はサタンの攻撃の全てを受け止めて、身体中が血まみれで、至る所に真っ黒なあざのような痕が付いてた。


「カイ様!カイ様……!! なんで、こんなこと……」


 意識を失っているカイ様から答えはない。このままでは死に絶えてしまいそうなくらい、息が細くなっていた。


「エリアナ様、カイ殿はかなり危険な状態です! 私の治癒魔法で延命しますが……闇魔法に効くのは光魔法だけなので、この延命もあと何分持つか……」
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