婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
アンジェロ様が全ての力を出し尽くす勢いで、治癒魔法を放出していく。
額には汗をかいていて、とにかく予断を許さない状況であることは誰の目から見ても分かった。
「くそっ!!! 私という護衛騎士がいながら!」
カイ様の護衛騎士・アンディが、これまでに見たことのない威力の雷魔法を落としていく。
彼も、全ての魔力を投げ打つ勢いだ。それに対してサタンは「フンッ」と鼻を鳴らして真っ黒な光線で返していく。アンディの雷魔法がこちらに跳ね返ってきた。
「きゃあっ!!」
「アンディ殿! 気持ちは分かるが、落ち着いてくれ!!」
「私はカイ様のために死んでも良いと思ってるんです! !だからっ……全力で行きます!」
濃い瘴気が立ち込める中、それぞれが得意な攻撃魔法を次々とサタンに当てていく。
カイ様の顔がみるみる色を失っていくのに対し、私は目の前が真っ黒に塗り潰されるようだった。ぼろぼろと、いつの間にか涙が溢れていく。
(カイ様……カイ様……やっと想いが通じ合ったのに、今生の別れなんて嫌です……お願い、神様、私の命に替えても……どうかカイ様を助けて……)
私の全てを投げ打っても良い。そう思えたのは、前世と今世を通してもカイ様だけ。
カイ様がいない世界は、光を失うのと同じなのだから。
そう祈りを捧げた瞬間、ピカッと白い光が私の体の中心から溢れ出したーー。
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