婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
第19話:命に替えても
「え……これは何?」
「あーあ、目覚めちゃったかぁ。僕、結構頑張ったんだけどなぁ」
「……どういうこと?」
溢れ出る光が、空間中を覆っていく。漂っていた濃い瘴気がどんどん薄まっていき、体が温かい光に包まれているような感覚に陥った。
皆が首を傾げているが、クリス様やニール様は勘付いたようだ。
「エリアナ、君が……」
「これは聖女特有の光魔法ですね」
「……えぇ!?! 私が、聖女……?」
先ほどまで攻撃的だった魔獣の王・サタンも、何かを諦めたように舞い散る光の粒を見届けている。
「あー君は沢山の人を幸せにしてきたんだねぇ」
「どういう意味?」
「僕が大嫌いな光魔法って、負の感情とは真逆の感情で育っていくんだよー。あとは君の強い想いで、溢れ出ちゃった感じだ。
あ〜〜もう、また僕赤ちゃんからやり直すの? 何百年ぶり?」
サタンの言っている意味がよく分からなかったが、倒れているカイ様に目を向けると、出血は止まり、黒いあざのような痕も全て綺麗に消えていた。
まだ目を覚まさないが、顔色も戻っておりホッとした。
私はいつも魔法を出すのと同じ要領で、サタンに向けて手をかざした。今なら光魔法を大量に放出できるような気がしたからだ。
「わぁ、君、僕のこと殺す気?」
「赤ちゃんから、もう一度やり直しなさい!」
「聖女サマとは思えないくらい、鬼だなぁ」
その言葉を最後に、サタンに向けて大量の光魔法を放出していく。目が眩みそうになるほど輝く光の渦に、私は己の魔力を全て注ぎ込んだ。
光魔法が直撃したサタンは、徐々に姿を変えていき、本当に赤ちゃんになってしまった。黒い羽は生えているから、きっと彼なのだろう。