婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「ほ、本当に赤ちゃんになっちゃった……」
「エリアナ!」
「エリアナ様!!」
皆が私の近くに駆け寄ってくる。ケイティはぼろぼろ泣きながら、私の体を支えてくれた。
「お嬢様、聖女様になられたのですね……」
「そうみたいね……今も夢みたいだけど。赤ちゃんになってしまったサタンは、どうすれば良いのかしら?」
そんな話をしていると、どこからか突然、真っ黒な翼が生えた女性が現れた。黒いボディスーツに、メリハリのある体つきで妖艶な雰囲気がある。
サタンの仲間なのか? と、皆が再び戦闘態勢を取った。
「サタンったら、可愛い赤ちゃんになっちゃったのねぇ。てか、この空間、光魔法が充満してるじゃない! うっわぁ気持ち悪っ」
「あなたは?」
「アラ、アナタがこの国の新しい聖女ちゃんね。ワタシはマリン帝国に住む魔獣の王・ライザよ。サタンはどうせ死にはしないから、私が引き取るわ。
それにしてもアナタ、随分派手に光魔法発現したみたいじゃない」
「え、これのこと?」
「違うわよ。この国中の瘴気が薄まって、魔獣も弱体化してるみたいよ。びっくりねぇ」
「……えぇ!?」
「じゃ、また会いましょうね、聖女ちゃん!」
赤ちゃんになったサタンを抱き上げたライザは、再び大きな翼を広げて飛び立っていく。その場からフッと姿を消してしまった。
「……終わった、のかしら?」
「そうだな、エリアナ……本当にありがとう」
クリス様が私に礼を告げた。クリス様だけでなく、共に戦ったケイティ、アンディ、魔法使いのニール様、騎士団長のレオナルド様、神官のアンジェロ様も私の近くに集まる。
皆、肩の力が抜けているようだった。