婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「エリアナ嬢、本当に素晴らしい魔法だった。誰一人死ななかったのは、あなたのお陰だ」
「エリアナ様、本当にありがとうございました」
「いえ、でも……マリア様もカイ様も、まだ目を覚まさないのですね。早く戻りましょう?」
「あぁ、そうだな」
そうして、アンディはカイ様を、レオナルド様がマリア様を担いで、私たちは魔窟の出口を目指して歩いて行ったーー。
***
魔獣の王・サタンを退治してから1週間。
私はカイ様が横たわるベッドの横で、カイ様が起きるのをずっと待っていた。
マリア様はあの日から3日後には目を覚ましたが、カイ様は闇魔法が直撃したからか、まだ目を覚ましていない。
医師や治癒魔法使いは「外傷は無いから、直に目を覚ますはず」と言っていたが、日に日に、本当に目を覚ますのか不安になっていた。
「私、カイ様がいないともうダメみたいです……」
眠るカイ様に向かって、つい独り言が漏れてしまう。
人は恋をすると、こんなに弱くなってしまうのだろうか? 自分でも、この感情の変化に驚いている。
思い返してみると、これまでもカイ様といると今まで出会ったことのないような感情に沢山直面してきた。
『エリアナ、今何を考えてた? ……他の男のことでも考えてるのかと思った』
『私は結婚するなら、そこに愛があると嬉しいが』
『エリアナ、顔が真っ赤。可愛い』
『本当に無事で良かった……』
『エリアナは、騎士団長のような男が好みなのか?』
『エリアナの作るパンが食べたい。後で、私のために作ってくれる?』
『……エリアナ、愛してる』