婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
カイ様がこれまで何度も、言葉と態度で愛情を伝えてくれていた。次は私が返していきたい。もうその想いに一切の揺らぎがなかった。
カイ様がお父様への手紙に『自分の命に替えてでも守る』と書いてくれたように、私もカイ様に対して同じように思っていた。
ーーコンコンッ
「はい」
「エリアナ、入るぞ」
ガチャっと扉を開けたのは、クリス様だった。後ろにアンジェロ様もついて来ている。
「ずっと側で座っているのも疲れただろう?」
「いえ、全く。私がしたくてしておりますから」
クリス様なりの気遣いなのかもしれないが、私は本当に『疲れた』と思っていない。ただただ、カイ様の側で、無事を祈っているだけだ。
「エリアナと少し話がしたい。ここはアンジェロに変わってもらっても良いか? 必要であれば、治癒魔法も施してもらおう」
「……分かりました。伺いますね。アンジェロ様、宜しくお願いします」
「はい、お任せください」
アンジェロ様に一礼し、私はカイ様が眠る部屋から退室した。クリス様の後に付いていき、応接室のような部屋に入った。
向かい合わせになり、それぞれソファに座る。
「クリス様、お話というのは?」
「あぁ、まずマリアのことだが。彼女は目覚めた後、自分の抱える心の闇に向き合った。今まで見て見ぬふりをしていた、と私に溢した」
「……そうだったのですね」
「この世界で生きていくために私との婚約も了承したが、本当に好きなのはアンジェロであることも明かしてくれた」
「……まぁ! それで、どうなったのですか?」