婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
(卒業パーティーでは美味しいものもあったけれど、一般市民には浸透していないのかも……。

 それに、ゲームの方は各地を浄化する旅と、その道中の色恋ごとに集中していたから、食文化までは細かく設定していなかったのかしら)


 この国の壊滅的な食文化に気付いてしまった私は、「もっと美味しいものを食べたいわ……!」という思いがムクムクと溢れてきた。

 食事が終わって突然立ち上がった私を、ケイティが驚いた様子で見上げる。


「ケイティ! 市場に行って食材を調達しましょう!」

「え!? 今ご飯を食べたばかりなのに、ですか??」

「えぇ、夜は私がご飯を用意するわ。まずは食材を調達しに行きましょう!」

「エリアナ様が料理されるんですか!? あれ、料理されたことはありましたっけ?」

「いえ、(今世では)ないわ」


 ケイティはズルッとずっこけていたけれど、その気持ちも分かる。今世では料理をしたこともない癖に、なぜか突然やる気満々で『料理をする!』と言い出しているのだ。

 このご主人様は何を言っているんだろう……と思ったに違いないだろう。


ーーこの時の様子を、一般市民に変装した皇太子カイル・フェザーとその護衛騎士・アンディに見られているとは露にも思わなかった。


「なぁ、アンディ。今、エリアナ嬢は『料理をする』と言ったか?」

「えぇ、おっしゃってましたね」

「クク、あんなに突拍子もないことを言うお嬢様だったかな? 私が知っている彼女は、よく学園で本を読んでいるような子だったと思うんだが」
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