婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

第20話:大切な存在


 クリス様との話が終わり、アンジェロ様のもとへ戻った。部屋に入ると、カイ様はまだすやすやと眠っている。


「アンジェロ様、ありがとうございました」

「いえ、殿下とゆっくりお話できましたか?」

「はい、婚約破棄の件があってから、二人きりで話すことも殆どなかったので。久しぶりにお話しできて良かったです」

「そうですか。カイ殿はまだ眠っているのですが、そろそろ起きるかもしれません。少しだけ治癒魔法を施して、私の魔力を分けました」

「ありがとうございます」


 通りで先ほどより顔色が良いわけだ。やはり治癒魔法使いの魔法は凄いな、と改めて感じた。

 せっかくアンジェロ様とゆっくり話ができそうだから、マリア様のことをどう思っているか聞いてしまいたくなるけれど……二人の問題だから、余計なことを言ってはいけない、とグッと言葉を飲み込んだ。


「それでは、私は戻りますね。また何かあればいつでも呼んでください」

「はい、お忙しい所ありがとうございました」


 アンジェロ様に一礼して、再びベッド横の椅子に腰掛ける。先ほどまでのクリス様との会話を思い出し、私はついカイ様の手をぎゅっと握ってしまった。


「先ほどクリス様に、カイ様が目覚めなかったらどうするんだ? と聞かれてしまいました。そんなの、答えは一つに決まっているのに……ねぇ、カイ様。絶対に目を覚ましてくださいね……?」


 そう告げた時だった。カイ様の手がピクッと反応する。「え!?!」と思い顔を確認すると、カイ様はうっすらと目を開けた。


「……カイ様?」
「あぁ、エリアナ」

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