婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「カイ様に真っ赤な顔を見られるのが恥ずかしいのですっ もう〜っ」
「ハハ、すまない。怒ったエリアナも可愛いな」
カイ様に揶揄われてしまったが……もし目が覚めたら、言葉でも行動でも伝えたいことがあったことを思い出した。
そして私は自ら、カイ様の唇に自分の口を押しつける。最初は驚いていた様子のカイ様も、すぐに受け入れてくれた。
「……エリアナ?」
「カイ様、愛しています。これからもずっと」
「ハハ、やっぱり大胆なお嬢様だな。でも、私もだ。愛してる、エリアナ」
そうして互いに引き寄せられるように、再び口付けを交わしたーー。
***
王家の一室を借りていた私とケイティは、一度公爵邸に戻った。
久しぶりに会った父も母も、弟・レオンも、皆感極まった様子で私を抱きしめてくれた。特に過保護な父は、我慢していた涙腺がすぐに決壊して号泣していた。
心配をかけて、本当に申し訳なかったと思う。
そして翌日には、公爵邸の庭師が綺麗に整えたガーデンにマリア様を招いて、お茶会を開いた。一部のお菓子は私の手作りだ。
お茶は侍女のケイティが淹れてくれた。
「マリア様、お元気でしたか? すみません、目覚めてすぐに伺えなくて……」
「とんでもないです! カイ様も目覚めておりませんでしたし、ドタバタしていましたもの。あ、私エリアナ様にきちんと謝っておきたくて……」
「なんのことでしょうか?」
「魔獣の王の言う『負の感情』が何のことか分からないまま、意識を失ってしまったのですが……。後からクリス様に聞きました。
聖女としての力も発現せず、役に立てず……周りから愛されているエリアナ様への妬みや嫉妬が奥底で渦巻いていたと。嫌な気持ちにさせて、本当に申し訳ございません……」