婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「いえ、謝る必要はありませんよ。誰しもが黒い感情を持っていると思います」
「エリアナ様も? 黒い感情を持つことはあるのですか?」
「えぇ、いつも清廉潔白という訳ではないです。あと、私もマリア様に謝らなければならないことがあります」
「え!? 何ですか??」
「実は……以前、臨時で採用された侍女の『オフィーリア』という者にお会いしたことがありますよね? あれ、実は私なのです。ちなみに一緒にいた侍女も、変装をしたケイティです」
近くにいたケイティも、ニコニコしながらマリア様を見る。
「えぇぇぇぇ!? 全っ然気が付きませんでした! でも、どうして潜入のようなことをされたんですか?」
「それは……」
乙女ゲームの話はケイティに聞こえないよう、声のトーンを落として話す。
「それは、あまりにも乙女ゲームのシナリオと違う展開だったので、何が起きているのか調査するためです。嫌な思いをさせていたら申し訳ございません」
「いえ、嫌ではないのですが……驚きました。あのオフィーリアさんがエリアナ様だったなんて」
「はい。これでお互い隠し事は無しですよね? おあいこ、ということで。本当の意味での『友達』になれたら嬉しいですわ!」
「エリアナ様……」
目元が赤くなるマリア様を見て、ふふと笑みが溢れてしまう。隠し事がなくなって、私も心が軽くなったような気分だった。
でも、他にもマリア様には聞きたいことが沢山ある。ズイッと身を乗り出して、「それで!」と切り出した。
「は、はい?」
「マリア様は、元の世界に戻るのですか? あと、アンジェロ様の件もお尋ねしたいです!」