婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

「私も手伝ってみて良いか?」

「えぇ、もちろんです! 一緒にパン生地をこねましょう! あ、手は私の水魔法で洗って……」

「私も水魔法が使えるから大丈夫だ。あと、風魔法も使える」

「あ、そうでしたね! 以前、授業でご一緒した時に使い分けておられて素晴らしいなと思ったことを思い出しました」

「覚えていてくれたのか、ありがとう」


 嬉しそうに微笑むカイ様を見ていると、何だかこちらも嬉しい気持ちになってしまう。

 魔法学園にいる頃は、授業でたまに一緒になれば話すこともあったけれど、そこまで話したことはなかった。今が一番、カイ様と沢山会話をしている。

 料理という共同作業を通じて、互いのことを知り、心を通わせることができたような気がした。


 二人で作ったものの中から、森で採取したベリーを使ったパン、野菜やハム・チーズを挟んだサンドイッチ、クッキーといった焼き菓子から販売することにした。

 本当は朝食用に食パンも売りたかったが、最初なので見た目が分かりやすい方が良いだろう、という判断になった。販売する物が決まれば、後はそれに向けた準備だ。

 久しぶりのパン作りということもあり、何度も練習を重ねた。アンディとケイティは仕事の合間に、街中でチラシ配りといった広報活動まで手伝ってくれた。


――そして、とうとう移動販売の初日を迎えた。


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