婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

第4話:広がる幸せ、忍び寄る影

 移動販売、初日。
 私たちは、朝早くから街の中心地に来ていた。


「カイ様やアンディまで、一緒に来て下さってありがとうございます!」

「エリアナ様、これまで毎日沢山練習されていたとカイ様からも伺っております。まずは初日、無事に終えられるよう微力ながらお手伝いいたしますね」

「アンディったら、そんなにかしこまらなくて良いのに」

「フフッ エリアナ様、アンディ様はとても真面目で優しいお方なんですよ」


 ケイティに褒められたアンディは、照れた様子だった。二人は一緒に広報活動もやってくれていたので、その過程で少しは仲良くなったようだ。

 皆が来てくれて心強い反面、本当にお客さんが来てくれるのか心配で、実は昨夜もあまり眠れていない。それに、今日は焼きたてのパンを届けるためにも、夜が明ける前にはパン生地をこね始めていた。


(食へのこだわりが薄いキアラ王国の人々に、果たして受け入れられるのかしら……)


 ここまで努力してきたが、全く受け入れられないかもしれない。そんな悪い結果も頭をよぎる。カイ様が不安を察知したのか、私に声をかけてくれた。


「エリアナ、不安にならなくて大丈夫だよ。君の作るパンや焼き菓子の美味しさは、僕らのお墨付きだからね」

「そうですよ! エリアナ様。今まで食べていたものは何だったんだろう? と思うくらいには、毎日革命が起きています!」

「フフ、私は革命を起こしてしまったのかしら」
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