婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
 二人に励まされて、再び元気を取り戻した。『作った本人が一番自信を持たなくてどうする?』と、何度も自分に言い聞かせる。

 そして、私達は焼きたてのパンの販売を始めたのだった。


***


 最初はまばらだった人の波も、事前の広報活動の効果もあってか、あっという間に人の列ができた。最初は皆様子を見ていたので、一人目のお客様と相対した時はとても緊張した。


「いらっしゃいませ、焼きたてのパンを販売しています。いかがでしょうか?」

「あら、これはあなたが作ったの? 見たこともないようなパンね」

「はい、私が作りました。こちらはベリーを使ったパンで、こちらは野菜やチーズなどを挟んだサンドイッチです。焼き菓子もあるので、こちらはおやつにおすすめですよ」

「どれも美味しそうね。いつも食べているような平たいパンとは全く違うわ。それぞれ一つずつ頂いても良いかしら?」

「はい! ありがとうございます!」


 その後に並んでいた親子は、子供が早速クッキーを食べ始めたので驚いた。でも、すぐに笑顔に変わっていく。


「これ、すっごく美味しい!!」

「やだ、ここで食べてしまったの!? お行儀が悪いでしょう。すみません、すぐ行きますので……」

「いえ、大丈夫ですよ。僕、クッキー美味しかった?」

「うん! これお姉ちゃんが作ったの? どんな魔法を使うの?」

「フフ、これは魔法じゃなくて、自分の手で生地をこねてじっくり時間をかけて作るのよ?」

「え! じゃあ僕にも作れる?」
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