婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

「もちろんよ! やり方さえ覚えれば、誰にでも作れるわ。あとはパンを焼く時に、火魔法が使えるか、魔道具があれば良いのだけど……」

「僕のパパが火魔法を使えるから、パンを焼けるね! 今度教えてね〜!」

「えぇ、いつでもうちに遊びにいらっしゃい」


 嬉しそうに母親と一緒に去っていく少年。やっぱり自分の作ってくれた物で、誰かが笑顔になってくれるのはとても嬉しい。


(火魔法が使えなくても、魔道具がもっと手軽に入手できて一般の人も扱えたら良いのに……)


 魔法にも得意・不得意はそれぞれあるから、お互い助け合っていくのは良いことだと思う。でも、魔力持ちは貴族が多いし、貴重な魔道具を手入れられるのも必然的にお金のある貴族が多い。

 食文化もある程度は貴族の間で発展してきたが、一般市民の間では質素なものしか食べられていない。


(食に対してこだわりが無いのではなく、それを発展させる環境が無かったのかも。
 魔道具をいきなり普及させるのは難しいから、まずは飲食店を開いていつでも美味しいものを食べてもらえるようにするしかないかしら……。
 ひとまず、今は目の前のことに集中しよう!)


 気を取り直して、再びパンの販売に集中した。初日にも関わらず沢山の人に買いに来てもらえて、あっという間に売り切れとなった。


***

〈side カイ〉

「アンディ、瘴気の拡大具合はどうだ?」
「カイ様、予想以上に早く拡大しているようです」
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