婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
 時間もあまりなかったので、急ぎパーティー用のドレスに身を包む。私の侍女であるケイティも、心配するように声をかけてくれた。


「お嬢様、殿下はいらっしゃるのでしょうか。せっかくのパーティーですのに、私にはお嬢様を綺麗に仕立てることしか出来ず……」

「ふふ、ありがとうケイティ。でも大丈夫。今日はレオンがエスコートしてくれると言うし、胸を張って行ってくるわ。それに、聖女様がこのキアラ王国に来て下さったことはとても嬉しいことでしょう?」

「そうですね……。私はお嬢様が嫌な思いをしないか、心配ですが……おめでたい席ですし、とびっきり綺麗に仕立てますね! あ、殿下の色はどうしましょうか?」

「そうね、一応入れておきましょう。婚約者ですし」


 こういったパーティーの席では、婚約者の目と同じ色をアクセサリー等で差し色に使うのが常だ。クリス王太子の目の色は薄めのエメラルドグリーンなので、それをドレスの差し色に盛り込むことにした。

 とはいえ、彼が私の目の色であるブルーを使ってくれるかは、正直自信が無いのだが……。


 その後、レオンと馬車で移動しながら、私は「聖女」や「光魔法」について考えていた。

 キアラ王国には魔法が存在しており、その種類は火・水・風・土・雷の基本属性に加えて、医師や神官が扱う治癒魔法、聖女だけが扱う光魔法、高位の魔獣だけが扱う闇魔法と8つの種類に分かれている。

 また、全員が全員、魔法を扱える訳ではなくいわゆる「無属性」の人もいた。
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