婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
その後、回収したパンや売り切れなかった分も含め、沢山抱えて自宅に戻ってきた。
仕事がひと段落したというアンディも合流して、4人で向かい合ってリビングの椅子に座る。私はつい、ため息が溢れてしまった。
「はぁ……まさか虫が入ってるなんて」
「エリアナ、君は本当にパンを作る過程で虫が入ったと思っているのかい?」
「……いえ、衛生面はかなり気を遣っているので、ほぼあり得ないと思っています」
「そうですよ! エリアナ様がパンを作る時は私も手伝っておりましたが、虫なんて入っているはずがありません!」
「……ですが、絶対とも言い切れないですし、証拠もありません。真実が分からない以上、他のお客様の不安を取り除くためにも誠心誠意対応するしかないと判断しました」
「そうだったのか……すまない、あの男が手を出そうものなら、私は剣を抜いていたかもしれない」
「私を守ろうとして下さっての判断ですから、大丈夫です。それにしても、あれが故意にやったことであれば、何が目的なのでしょうか?
誰かから指示されたとしたら、私、恨まれるようなことをしてしまったのでしょうか……」
ケイティは『納得いかない』という様子で、鼻息を荒くしている。
せっかく軌道に乗り始めていたのに、誰かに意図して出鼻を挫かれてしまい落ち込んでしまう。
でも、誰からの指示か、何となく見当がついていた。それを察したかのように、カイ様がアンディに話しかけた。
「アンディ、瘴気や魔獣の状況はどうだ? 拡大しているのは変わらないか?」