婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

「はい、瘴気はかなり広がっていますし、以前は街に魔獣が現れることもなかったのですが、最近は突然現れる場所も出てきているようです。
 瘴気の影響で、体調不良を訴える国民も増えています」

「そんな……」


 乙女ゲームのシナリオ通りに進んでいれば、少しずつ瘴気が減り始めて「聖女様、万歳!」という声も聞こえ始める頃なのに、減るどころか増えているなんて。

 シナリオとは違うことが起こっていることに、動揺してしまう。

 でも、アンディの言うことは嘘ではない。先週パンを買いに来た住民との会話を思い出していた。


『いらっしゃいませ! アンさん、今日もありがとうございます。どちらにされますか?』

『エリアナちゃん、今日はこのサンドイッチとベリーのパンと、新作の食パン、どれも2つずつお願いできる?』

『はい、あれ? 今日は多めに買われるんですね!』

『そうなのよ、いつも買いに来ているララさん覚えてる? 最近、瘴気の影響で体調を崩しているみたいで。うちお隣さんだから、代わりに買ってきてくれないかって頼まれたのよ〜』

『えぇ!? そうだったんですか? 心配ですね……。それにしても、パン食べられますかね?』

『エリアナちゃんのパンやお菓子を食べると、元気になるって言ってたのよ。だから、食べられるならしっかり食べた方が良いと思うの』

『そうですか……そう言って頂けて嬉しいです』
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