婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

 アンさんから、ララさんが体調不良になっていることを聞いていたから、本当に瘴気も魔獣も増えているのだろう。

 それにしても、クリス様や聖女様は何をやっているのだろうか。乙女ゲームに登場する他の男性キャラも含めて、一緒に各地を回って浄化をしていないのだろうか?


「カイ様、今回の瘴気や魔獣の件と、パンの異物混入の件はどう繋がってるのでしょうか? まさかとは思っていましたが、もしかしてクリス様の差金……?」

「あぁ、エリアナの言う通りだよ。今回の異物混入事件は、王太子が指示したことだと思っている」

「えぇ!? 何のために? というか、もう婚約破棄されて何も関係がないのに……! でも、瘴気や魔獣が減らないことの腹いせなのかな? という考えは少々よぎっておりました」

「それはあるかもしれないな、そんな腹いせなどしている場合ではないのに。聖女に出来ないなら、力づくでも魔獣を抑え込むしかないだろう。あとは、まだエリアナに気があるのかもしれない」

「クリス様が? それはあり得ません。学園時代は私のことはそっちのけで、色んな人に愛想を振り撒いていたので」


 ハハ、とカイ様が笑い出す。カイ様から見たクリス様の印象も、同じようなものなのだろう。


「エリアナ、君は王太子のことをそのように見ていたのだな。二人は愛し合っていた訳ではないのか?」

「えぇ、確かに幼い頃から何度かお会いしておりましたが……貴族の結婚とはそういうものだと思っておりました」

「そうか。私は結婚するなら、そこに愛があると嬉しいが」
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