婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
魔法だけでなく、魔獣を倒した際に手に入れられる魔石や、魔石を応用して作った魔道具といったものもこの世界には存在している。
魔法を使えるのは血筋が影響するのか、貴族であることが多い。
私は水魔法をメインに、火魔法も少し扱うことができる。2つ以上の魔法を扱える人は、さらに希少価値が上がるといった具合だ。
(クリス様はなぜか、火魔法しか使えないのよね……。彼のプライドを傷つけそうで、あまり私のことは話さなかったけれど)
もちろん貴族で無くても使える人はおり、魔法を使える者の方が働き口は見つかりやすい。
そして、聖女だけが扱うことのできる光魔法は、この国でかなり特別な扱いをされている。前聖女が亡くなってしばらく経つので、最近は魔獣やそれに伴う瘴気が人々の生活を脅かしていた。
もし聖女がキアラ王国各地を周り、光魔法で各地を浄化すれば魔獣や瘴気の影響も少なくなる。
それらが完全に無くなることはないけれど、現状は健康被害を訴える国民も増えている。焦った王家が急いで聖女を召喚したのだろう。
(……いくら魔法が2種類使えるからと言って、光魔法の使い手には敵わないわ。だって、この国唯一の存在ですもの)
クリス王太子のエスコートが無い時点で、少しは覚悟をしてパーティーに参加したはずだった。
でも、いざ目の前で婚約破棄を言い渡されると、目の前が真っ白になるというものだ。ついでに激しい頭痛に襲われて、私は立っているのもやっとだった。