婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

「……カイ様、まさかエリアナ様に手を出した訳では無いですよね?」

「ハハ、そんなことはしてないよ。ちょっとした事故があってね。フッ……本当にエリアナは可愛いなぁ」


 二人の会話はよく聞こえなかったけれど、ニコニコしているカイ様と、何だか納得いっていない様子のケイティが私を見ていた。


 この後、三人でご飯を食べた後は、カイ様は仕事があると言って外に出た。

 私達は家の掃除や洗濯を終えてから、畑の様子を見に行くことにした。

 昨日種を植えたばかりだし、何も無いはずなのだが……


「きゃぁぁあ! な、何あれ!?!」

「お嬢様!! あれ、カイ様がおっしゃっていた火属性の魔獣では無いですか!!?」

「えぇえーーーーーーーーっ!?!」


 この辺りに魔獣が出たと言っていたけれど、まさかこんな日中の街の外れに出てくるとは思わなくて。

 というか、魔獣と対決するのは聖女様とその取り巻きの仕事じゃないのーーーっ!?!


「やだ、ケイティ、あの魔獣こっち見てるわよ? というか、見た目がほぼキツネじゃない!!」

「え、お嬢様、キツネって何ですか!?! ここは私が注意を引きますので、お嬢様は誰か助けを呼んできてください……!!」


 ケイティは箒を持っているが、足がガタガタ震えている。こんな状況で一人残していけないし、カイ様はいない。

 セカンドライフ始まって以来の、絶体絶命のピンチだったーー。



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