婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
『ハァ!? ちょ、待てエリアナ、すぐ! 風魔法で飛んでいくから……!」
「すみません! お待ちしてます!!」
そんなやり取りをしている間に、ケイティが息を切らして戻ってきた。
「エ、エリアナ様っ……まず、パンですっ! ハァッハァッ」
「ケイティ、ありがとう! ほーらキツネさん! 美味しい美味しいパンですよ〜!」
「お嬢様……イヌじゃないんですから……」
ケイティは呼吸を整えながらも、私の緊張感のない発言に力が抜けているようだった。私はパンを魔獣に向けて投げる。
魔獣は『アァ?』とでも言いたげな顔をしているが、クンクン嗅いでパンを食べ始めた。
その間に、私は渡された魔石を握り締めながら、自分の中心に沢山の魔力を集めるようなイメージをする。
ギュウッと魔力を凝縮するイメージが出来たら、バッと両手を前に出し、そしてその魔力を一気に放出した。
あまりの威力に強さに、反動で体が倒れそうになるが、足を踏ん張って持ち堪える。
『ギィアァァァァァッッ!!!!』
大量の水を浴びた魔獣が、叫び声をあげた。それと同時に、体に纏っていた炎がシュゥゥと消えていく。あっという間に小さくなった魔獣の額から、魔石がポロッと落ちていった。
そして魔獣だった生き物は、森の方に向かって逃げていった。
その様子を見た私は、ホッと胸を撫で下ろした。ケイティはへなへなとその場に座り込んでしまう。
「お、お嬢様……お見事でした……もの凄い威力でしたね」
「えぇ、魔石があったお陰様かしら? あんなに水魔法を放出したの、初めてだわ……」
呆然としていると、「エリアナ!!」と叫ぶカイ様の声が聞こえてきた。