婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

「あ、カイ様! 来て下さったのですね!!」

 そう言って顔を向けると、カイ様に突然ぎゅぅぅっと抱きしめられる。


「え!?カイ様? ど、どうされました!?!」

「目の前で、君が大量の魔力を放出する瞬間を見て、私は卒倒しそうだった……」

「ごめんなさい、私、どうにかしないとって焦ってました」

「本当に無事で良かった……」


 カイ様の私を抱きしめる力が強くなる。カイ様の香りが強く感じられて、何だかホッとしてしまった。
 それと同時に、昨夜ネックレスをつけてもらった時のことを思い出して、ドキドキしてしまう。


「カイ様、魔獣にも私のパンは美味しいみたいです。フフッ」

「全く、魔獣まで手なづけるつもりだったのか? 困った人だな君は」


 カイ様も笑みを溢しながら、私の話を聞いてくれている。そしてふと思い出したように、尋ねられた。


「そうだ、エリアナ。あれは本当に水魔法なのか?」

「え? えぇ、私が使えるのは水魔法と火魔法ですから、先ほどは水魔法を使うイメージをしていました。それが何か?」

「いや、ただの水魔法に見えなかったから、気になっただけだ。気にしなくて良い」

「魔石の力を借りたからですかね? いつもより威力が増したような気がします。あ、何だか眠くなってきました……」


 力の使いすぎか、意識が朦朧としてくる。私はカイ様にもたれかかりながら、徐々に意識を手放していた。


(そういえば、あんな通信機能のついた魔道具、とても高価なものだわ。
 きっと、持っているのは王族くらいじゃないかしら? なぜ、カイ様はあれを持っていたのかしら……)


 そんな魔獣と何ら関係ないことを考えながら、意識がプツンと切れてしまった。



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