婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

第8話:シナリオ通りにいかない世界

 目を覚ますと、そこは家のリビングの天井だった。どうやら意識を手放した後、カイ様がリビングのソファでまで運んでくれたようだ。

 起き上がると、ケイティの声が聞こえた。


「お嬢様! 起きたのですね! 体調はいかがですか?」

「ケイティ、まだ魔力は少ない感じがするけど、もう大丈夫よ。私、結構寝てしまったのかしら?」

「いえ、数時間ですよ。アンディ様も帰ってこられたのですが、少しお話しできそうでしょうか?」

「えぇ、もちろんよ。街の状況も確認したいし」

 
 そう言って皆が座っている場所に移動する。ケイティの隣に腰を下ろし、カイ様、アンディと向かい合わせになった。


「エリアナ、もう体調は大丈夫?」

「えぇ、カイ様が運んでくださったのですよね? ありがとうございました」

「いや、とても軽かったよ。エリアナは人に料理を振る舞うだけじゃなくて、自分でもしっかり食べた方がいいな」


 ふわっと微笑むカイ様。以前だったら何とも思わなかったのに、最近カイ様の距離感がおかしいからか、いちいちドキドキしてしまう。

 二人の間に甘い雰囲気が流れ始めた所で、アンディが咳払いをした。


「エリアナ様、ちょうどお二人には話していた所だったのですが、街の状況を報告しても宜しいでしょうか?」

「えぇ、もちろん。お願いします」

「ここ最近、魔獣の目撃情報はあったのですが……どうやら、今日エリアナ様が退治して下さった魔獣が連日街に降りてきていたようです」

「なるほど、あのキツネみたいな魔獣が……」

「あの、キツネとは?」

「あ、いえ、それは大丈夫。それで?」
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