婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
アンディは『キツネ』について気になったようだが、話を続けた。
「それで……その合間も、水魔法が使える住人が退治を試みたのですが、警戒心が強いのか逃げるのが早く、なかなか攻撃が当たらなかったそうです。
それで、次の日には畑が焼けたようになっていて、収穫前の野菜を食い散らかした跡が残っていたそうでして」
「それは、きっとお腹が空いていたのね!」
「そうなんです。あの魔獣、お腹が空いていたようなんです。それにしてもエリアナ様、どうしてお腹が空いていると分かったのですか?
パンを投げたとケイティから聞きました」
「畑の辺りで匂いを嗅ぐ仕草をしていたんだけど……でも、本当にお腹が空いているかどうかは分からなかったわ。
ただ、真っ向勝負をしたら負けると思っていたから、何かで気を引くしかないと思って。それで思いついたのがパンだったの」
「なるほど……」
アンディは納得いったような、いかなかったような顔をしているが、本当に思いついたのがパンだったのだから仕方がない。
「エリアナ様が退治して気を失われた後、私もすぐにこちらに来たのですが。さらに時間が経ってから、ようやく王家の騎士がやってきましたよ。もう数日前から魔獣は現れていたというのに」
「あら、やっと来たのね! それでどうなったの!?」
「もうこちらで退治したので帰ってもらって問題ない、と帰らせました。王家はこの辺りで魔獣が出ると想定していなかったそうで、来るのが遅れたと言っていました。
全く、本当に仕事が出来ない人達です」
「全くだな。あぁ、そうだ。エリアナ、魔獣が落としていった魔石はこれだよ。君が持っていると良い」