婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

 そう言って、カイ様が魔石を差し出す。小ぶりの魔石だが、透き通った紫がとても綺麗だった。質の良い魔力が流れていることが分かる。

 自分の魔力に余力がある時は、こうした魔石に力を移しておいて、いざという時のために力を温存することもできるのだ。


「有り難くいただきますね」

「もちろんだよ、君が浄化したのだから。ただし!」

「ただし?」

「……あまり危ないことはしないでほしい、私が必ず助けに行くから。エリアナが魔獣と対峙しているのを見ると、私の寿命が縮まりそうだよ……」

「フフッ カイ様、優しいのですね」


 ふと、『これからも、こうやって魔獣が現れるのだろうか。瘴気の問題もあるし……根本的な解決になっていないわ』と不安が襲ってきた。


「エリアナ、どうかした?」

「えぇ、今回魔獣を退治しただけでは、根本的な解決になっていないような気がして……本当は聖女様が各地を浄化して下されば良いのですが」

「そうだな。皆、何か良いアイデアはあるか?」

「他国の聖女様をお呼びするのはいかがでしょうか?」

「効果はあるかもしれないが……各国の交渉に時間がかかるかもしれないな。
 それまでこの状況を抑え込めればいいが……それに呼んだとしても、この国の魔獣や瘴気に効果があるかは保証出来ないな」

「そうですよね……」

 
 解決方法が見出せず、少し暗い雰囲気になっていく。

 既にシナリオ通りの展開にはなっていないものの、私は乙女ゲームで把握しているシナリオをどこまで皆に話して良いのか、迷っていた。

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