婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

「あぁ、エリアナ嬢が私のパートナーだったらな」

「カイ様、エリアナ様はクリス王太子の婚約者ですし、それはなかなか……」

「もちろん分かっている。私が出来るのは、今こうやって彼女を眺めるだけだ。帝国に帰ったら、散々見合い話を用意して待っているんだろうな。父上は」 


 ハァ、とため息が溢れてしまう。でも、仕方のないことだ。無理やり奪うことは彼女も喜ばないだろう。
 そう思って1年過ごしてきたのに、まさか、あの王太子が婚約破棄をするなんてーー。


「アンディ、神様は私に味方してくれたと思わないか?」

「えぇ、このようなことがあり得るのですね。この後はどうされるのですか?」


 クリス王太子の婚約破棄宣言の後、私達はエリアナがどのような行動に出るか伺っていた。どうやら、王都の外れの街・グラニットに侍女と二人で行くというのだから驚いた。


(彼女もまさかあっさり身を引くとは思わなかったな……王太子妃教育は大変だったろうに。どういう心境の変化だろう? クリス殿には既に愛想をつかせていたのか?)


 彼女にアプローチしようと、グラニットまで着いてきてしまった。

 魔法学園卒業と同時に、マリン帝国に戻らなければならないのだが……魔獣や瘴気の影響を調べると、最もらしい理由をつけて出来る限り残ることにした。

 全てはエリアナを皇太子妃に迎えるためだ。失敗は許されない……。
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