婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「はい、何でしょうか?」
「……お嬢様の考える『良いこと』は、少々怖いのですが。慣れてきている私もいます」
「フフ、ケイティったら。王家の侍女に扮して、潜り込むのはどうかしら! 向こうがどういう戦い方をするのか、聖女は本当に光魔法が扱えないのか、情報収集をするのよ」
「侍女に扮すると言うのは、誰がですか?」
「もちろん私が、よ!!」
「「「えぇ〜〜〜っ!?」」」
「何よ、そんなに驚かなくても……」
カイ様は笑いながら「またエリアナは面白いことを言い出した」と言いながら、私のアイデアに賛成してくれた。
「確かに遠目で見ているより、実際に潜り込んだ方が格段に情報収集が出来るだろうね。
でも、もしバレた場合は危険だ。そうだ、ケイティも一緒に王家の侍女として行けるかい?」
「わ、私もですか……!? もちろんお嬢様を一人では行かせませんが、王家の侍女ほど出来るか不安ですね……」
「ケイティなら大丈夫よ! 公爵家一の仕事のできる侍女だもの!」
「そう言って頂けるなら……」
こうして、私とケイティは王家一行の侍女として潜り込むことにした。
その間、カイ様とアンディは魔獣に関する情報収集を進めるらしい。
今回の魔獣退治行きは突然のことだったらしく、人数も充分に用意できなかったとかで、私たち二人はすんなり潜り込むことができた。何とか理由をつけて、一日限りの侍女として働くことになった。
***
私とケイティは、侍女長の指示のもと、雑用もテキパキとこなした。ケイティが私に耳打ちしてくる。
「お嬢様、貴族令嬢とは思えないくらい無駄のない素晴らしい動きです。掃除洗濯をやっていた成果でしょうか」