婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

「ありがとう、ケイティ。でも、ここではお嬢様ではなくて、オフィーリアと呼んでちょうだい」

「はい、オフィーリア」

「そういえば、ケイティは名前を変えなくて良かったの? あと、クリス様があなたを見たら気づくんじゃないかしら。公爵家でお会いしたことあるでしょう?」

「何度かお見かけしたことはありますが……あのクリス様が私のことを覚えていると思いますか?」

「うーん、それは確かに怪しいわね」


 王太子の周りには沢山の侍従・侍女や護衛騎士がいるし、一介の、しかも公爵家の侍女まで覚えるのは流石に難しい気がする。

 少しでも変装しておけば、クリス様対策は大丈夫な気がしてきた。

 こうして二人で雑用をこなしていたが、そこで侍女長に声をかけられた。


「オフィーリア、ケイティ、王太子殿下への配膳を手伝ってちょうだい」

「「はい、かしこまりました」」

「……ケイティ、王太子一団に近づくチャンスね!」

「はい、それにしてもオフィーリア、とても楽しそうですね」

「潜入捜査だもの、わくわくしちゃうわ!」

「……くれぐれもバレないよう、気をつけて参りましょう」


 クリス様達の食事を配膳するため、カートを押しながら歩いていく。蓋があって食事の中身は見えないが、良い匂いが漂っていた。


「あぁ、ケイティ。やっぱり王家の人々はとても美味しいものを食べているのね! 国民とは大違いだわ。何が入っているか、とても気になるわね」

「オフィーリア、開けてはいけませんよ」
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