婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「大丈夫、今は開けないわ。後でこっそり見るんだから」
二人でテキパキと配膳していくと、王太子一団は今後の作戦について話している最中だった。
「ニール、今回はお前の風魔法でいけそうか?」
「はい、魔石も魔道具も用意してありますし、大丈夫かと思います」
「そうか、なら安心だな。マリアは……早く、本来の力を発揮できると良いのだが」
「クリス様、申し訳ございません……」
聖女マリア様が謝ってから、シーンと静かになる。魔法使いのニール様は「はぁ」と小さくため息をついた。
「私が基本属性の魔法を全て使えるから何とかなっていますが……本来は聖女様お得意の光魔法で鎮めていただきたいですね」
「ニール、そのような言い方はするものでない」
ニール様がクリス様に諌められているが、騎士団長のレオナルド様や神官のアンジェロ様も浮かない顔をしている。
(ゲームのシナリオだと、この時既に聖女マリアに対する好感度が全員高いはずなのに……
クリス様以外は誰一人、マリア様と関係を深められていない? やっぱり、光魔法が使えないことが原因なのかしら……)
あれこれ考えていると、隣にいたケイティから肘で小突かれた。そうだ、私は今王家の侍女として雇われているんだったわ。
それぞれの前に食事を出す。蓋を開けると、この村で収穫した卵、肉、野菜類をふんだんに使った料理が現れた。
特に、卵をたっぷり使ったオムレツや牛肉のコンフィはとても美味しそうだった。