婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「オフィーリアさん、こんにちは!マリアです。あのぉ、年も近いのでそんなにかしこまらなくても……」
「失礼いたしました、あ、いえ、ごめんなさい。聖女様ということもあり、つい」
「そうですよね……」
マリア様は憂いを帯びた表情で、視線を下げた。彼女は彼女で、苦労が多いのかもしれない。
「失礼ですが、マリア様はおいくつなのでしょうか?」
「私は17歳の高校2年生です。あ、この世界には高校なんてないんだった……。オフィーリアさんは何歳ですか?」
「私は18歳です」
「そうなんですね、でも、もう侍女として働いていてすごいですね」
「マリア様の方が素晴らしいですよ。この国唯一の存在なのですから」
私は出会って早々、一気に踏み込んだ会話に出た。『この国唯一の存在』と言われて、どのような反応をするのか気になったからだ。
「それが……ここだけの話ですが、私、光魔法が使えないんです。もしかしたら『無属性』なのかもしれません」
「まぁ……」
「本当はクリス様に『誰にも言うな』と言われていたのですが、私、もう辛くて……。
ある日突然この世界に飛ばされて、知っている人は誰もいないし、家族にももう会えないし……。でも、クリス様の手を手放したら私は生きていけなくて……うぅっ」
「そうだったのですね」
泣き始めたマリア様の背中をさする。やはり、彼女はこの世界では孤独で、何とか生きていくために必死だったんだ。
歳の近い女性につい、弱音も吐きたくなってしまったのだろう。それにしても、無属性とは……。