婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

(無属性となったら、クリス様以外の男性陣の態度も頷けるかもしれない。
 聖女として召喚したはずなのに、光魔法はおろか、何一つ魔法が使えないということなのだから……。それにしても、『マリア』という名前だけで召喚してしまったのだろうか?)


「マリア様、ご家族に会えないのは辛いですね。私も家族とは今離れて暮らしていますが、たまに顔を思い出すと、ふと寂しい気持ちに襲われることがあります」

「オフィーリアさんも?」

「えぇ。ですので、マリア様の悲しい気持ちは計り知れないのだと思います。元の世界に帰る方法は無いのでしょうか?」

「帰る方法は無いのかもしれません……他の国では聖女様がその後もずっと、その国に残っていると聞きました」

「でも、マリア様は聖女様の力がまだ発揮されていない、ということですよね。こんなことは軽率に言ってはいけないと思いますが……もしかしたら、帰れるかもしれませんよ?」

「えっ……確かに、聖女じゃなければ帰れますかね……? その発想はなかったです……」


 聖女でないのなら、この国が彼女を無理に留まらせる理由もない。召喚させる方法があるのなら、帰る方法も実はあるのではないだろうか?


「魔獣騒動が落ち着いたら、クリス様か魔法使いのニール様に相談されても良いかもしれませんね」
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