婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

「それは良いアイデアだね。でもエリアナも先ほど魔力を使ったんだから、疲れているだろう?」

「大丈夫です! 皆さんの笑顔を見れば私は元気になるので!!」

「ハハッ それは頼もしいな。私から宿屋の主人に頼んでみよう」


 その後、カイ様のお陰で宿の料理場に入らせてもらうことができた。


「村で採集した搾りたての牛乳があるなら、バターも作れるわ! 少し手間はかかるけど、じゃがバターを作ろう。あとは王家の食事を真似して牛肉のコンフィ、あとクレソンやトマトも添えて……。温野菜や温泉卵も用意しちゃおう!」


 なんだか盛り沢山になってしまったが、ケイティや温泉宿の人にも手伝ってもらい、宿の魔道具も借りて無事作り終えた。

 それに、パンの方は作り方を覚えたカイ様とアンディが二人で作ってくれた。


「これは、美味しい!! エリアナ様、こんなに美味しいご飯は食べたことがありませんよ。それにレシピまで共有して下さって、本当に宜しかったのですか?」


 宿屋の主人が、用意したディナーを食べながら私に問いかけた。他の宿屋の従業員も「美味しい…!」と感動していて、中には涙を浮かべながら食べている者もいた。


「えぇ、もちろんです! この土地で採れる物で作っているので、ぜひまた作ってみてください!」

「本来、レシピは門外不出にする料理人が多い中で、あなたは女神なのだろうか……もしかしたら聖女様かもしれない!」

「フフ、私は聖女ではなく、ただの貴族令嬢のエリアナですよ!」


 みんなが喜んでくれて、またポカポカと温かい気持ちになった。あぁ、こうやって笑顔を見れるのが何よりも嬉しい。
 
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