婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
ご飯を食べた後、私達は交代で温泉に入って寝る準備をした。私は前世で入った温泉に再び浸かれたことが嬉しく、皆が寝静まった頃にまた一人で入ることにした。
***
「ふぁ〜〜 良いお湯だなぁ。日本に戻ったみたい!」
今日は魔獣退治から始まり、皆に手料理を振る舞って、かなりパワーを使ったので体は疲れてきっていた。お湯の中で脚をググッと伸ばしてみる。
お湯の温かさもあり、血流がどんどん良くなっていくような気がした。
すると突然、入り口の方から誰かの声が聞こえてくる。
「あれ、エリアナも入っていたのか?」
「カッ カイ様!?!」
まさかこんな時間に誰かが入ってくるとは思わず、あわあわと取り乱し始める。
前回のシャワールーム事件に続き、腰に布を巻いた状態のカイ様が現れて一気にのぼせそうになった。
「え、ちょ、カイ様、どうされたんですか!? こ、こんな時間に……!」
「ここの温泉がとても気持ち良かったから、また後でゆっくり入ろうと思っていたんだ。混浴の温泉みたいだから、私も入って大丈夫か?」
「は、はい、いいえ? えーと、大丈夫です……」
カイ様が私の様子を見て「クク」と喉の奥を鳴らすようにして笑うと、同じ湯ぶねの中に入ってきた。
先ほど見たカイ様の鍛え抜かれた上半身が目に焼き付いて、ドキドキが止まらない。
前世からそうなのだが、私は鍛え抜かれた筋肉に弱いのだ。それを知ってか知らずか、カイ様は突然妙なことを尋ねてきた。
「エリアナは、騎士団長のような男が好みなのか?」