婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「え? 騎士団長のレオナルド様ですか? そのようなことは言ったことがありませんが、どうしてそう思われたのです?」
「アンディが王太子達の名前を出した時、レオナルド殿の時だけ反応があったように見えたんだ」
「あぁ、それは……」
前世で乙女ゲームをプレイしていた時、もし「推し」と言うならレオナルド様だったなぁと思っていたのだ。
ほとんど顔には出ていなかったと思うが、カイ様はそのような微妙な反応さえも読み取ってしまうのかと驚いた。
「いえ、好きとか、そういった感情ではありませんよ。ただ、あのように鍛え抜かれた筋肉は、素晴らしいなと思いまして……ひゃっ!?」
突然ザパッと湯船から立ち上がったカイ様が、何やら焦ったように私を見ている。
「エリアナは、鍛え抜かれた筋肉が好きなのか!?」
「え、えぇ、まぁ、素晴らしいなと思いますが……カイ様の筋肉にも、その……惚れ惚れしていますよ?」
「そうか……」
焦ったかと思いきや、次は安堵したかのように胸を撫で下ろしてまた座る。
カイ様の筋肉を目の前で見て、私はそろそろ熱さも限界に達してしまい、先に上がることにした。
「カイ様、先に上がりますので、その……少し横を向いていて下さいますか?」
「あぁ、分かった」
(時折、嫉妬のような気持ちを向けられて、カイ様に翻弄されているわ……)
こうして少しずつ、私たちの関係は変わりつつあったーー。
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