婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

 昨日と同じ戦い方でカイ様が指示を出し、皆で魔獣に対して水魔法を発射する。全身がドロドロに溶けたところで、火魔法に切り替えた。

 隣で宿屋の主人が、もの凄い威力の火魔法を放出している。


「ご主人、火魔法が得意なのですね! 砂状にするどころか、焼き尽くしてしまいそうな勢いです!!」

「いやぁ、こんなに魔力が出ることはないんだが。なんだか力がみなぎるぜ!」

「このまま一気に畳み掛けましょう!!」


 自分の出す火魔法から、キラキラと光が舞っているように見えたが、それが何故なのか分からない。
 昨夜のように砂状になるどころか、魔獣のサイズが少しずつ小さくなっているように感じた。


(これは一体どう言うこと……? でも、今は考えている時間がない!)


「カイ様!! 風魔法をお願いします!!」
「あぁ! 任せてくれ!!」

 ビュオォォォォォッ


 カイ様の魔法で、一気に風が舞っていく。魔獣のサイズが少し小さくなったからか、カイ様はいとも簡単に魔獣を退治してしまった。

 魔獣についていた魔石を拾い上げると、辺りの瘴気がだんだん和らいで、爽やかな山の空気に変わっていった。


「カイ様、皆さん、やりましたね!!」
「みんな、ありがとう。お疲れ様」


 その場で、ワァッと歓声が上がる。


「いやぁ、まさか本当に倒せるとはな! 皆よくやったな」
「殿下達が出て来ずとも、退治できましたねぇ!」


 そんな話を聞いて思い出す。クリス様達に、これまでの経緯を誰がどう説明すべきなのだろうか……。
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