婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「アンディ、クリス王太子への説明はお前に任せて良いか? エリアナとケイティ、そして私も次に魔獣が出る街に向かおう」
「カイ様こそ、風魔法でひとっ飛び出来るのですから、ご自身で説明されても良さそうですが」
「そうなのだが……でも、エリアナは王太子と会いたくないだろう?」
「えぇ……異物混入事件の件もあるので、なるべく会うのは避けたいのですが……でも大丈夫ですよ? 私とケイティは先に移動しますので、カイ様はすぐ飛んできてくださいね?」
「あぁ、分かった。そうしよう。あ、そうだエリアナ」
そう言って、カイ様が私の側に来て、耳元で囁いた。
「今回の退治で結構魔力を使ったから……エリアナの作るパンが食べたい。後で、私のために作ってくれる?」
「えぇ、もちろんですよ? でもなぜ皆から聞こえないようにしているのですか?」
「私がエリアナに甘えてばかりだと、後ろの二人が怒るからな」
カイ様が言う『後ろの二人』というのは、アンディとケイティのことだろう。二人とも「カイ様がまた甘えている……!」と険しい顔をして立っていた。
「お嬢様、カイ様の『おねだり』ですが、負担であれば断っても良いのですよ? 先ほどもお嬢様が大活躍だったのですから!」
「エリアナ様、私にできることであれば何なりとおっしゃってください」
「フフッ 二人とも、ありがとう! でもカイ様は特に頑張ったから、後で労ってあげないとね!」
満足げな顔をするカイ様と、心配するアンディを残して、私たちは馬車に乗って先に移動することにした。
そして、お世話になった温泉宿の主人や従業員の皆さんにも、別れを告げたーー。
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