婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「君が魔獣退治に参加したことにとても驚いていたよ。あと、君の動向を追っているようだった。君の作ったパンやご飯を食べたことがないことを悔しがっていたな」
カイ様はクリス王太子と話していたことを思い出し、「クク」と笑っていた。
「もう、クリス様は何がしたいのか、本当によく分からないですね!」
「ハハ、エリアナは分からなくて良いよ。そうだ、次に行く街は海辺にある『メーア』と言う場所だったね」
「えぇ、メーアは王都からも距離があるので、私は行ったことが無いんです。カイ様の故郷、マリン帝国も首都が海の近くでしたよね? どのような場所なのですか?
以前、何の食材が有名なのかは聞いたことがあるが、それ以外は地理の授業で学んだことしか知らなかった。
「キアラ王国は北にあるけど、マリン帝国は南にあるから年中暖かいし、国民も陽気な人が多いね。もちろん魚もとても美味しいよ」
「まぁ、レモンやオリーブ、香辛料だけでなく魚も! ますます行ってみたいです」
「……いつか、私の故郷に一緒に来てくれるか?」
カイ様が私の空いた手を取り、微笑みながら真剣な眼差しを向ける。
『ただ一緒に食材を探しに行く』以外の意味が含まれているように感じた。
この誘いも、『元同級生』以上の距離感になっていることも、どれも嬉しかった私の答えは一つだった。
「はい、もちろんです。カイ様が案内してくださいますか?」
「あぁ、エリアナに見せたい景色が沢山ある。必ず行こう」
こうして私達を乗せた馬車は、海辺の街・メーアへと到着したーー。
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