婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

(目の前で困っている人がいて、自分の料理で解決出来るかもしれない)

 そう気付いてしまったからには、首を突っ込まずにはいられない。うずうずとしながら、様子を伺って口を開いた。


「あのー、私料理が得意なのですが。良かったらお手伝いいたしましょうか?」

「お嬢様!!」

「えっ! 良いのかい?! でも、お嬢様と呼ばれるくらいだから、貴族とか身分の高い家柄なんじゃ……」

「いえ、気にしないでください。困った時は助け合う、そこに身分は関係ないでしょう?」

「それはありがてーけど……」

「まず、王都では食べられないような魚料理から考えましょうか!」


 隣にいたケイティは頭を抱えていたけれど、すぐに気を取り直したようだった。


「それにしても、日頃焼き魚を食べている王太子殿下に刺身のような生魚は抵抗がないのでしょうか?」

「……確かに、王都から来る人間は、最初は抵抗があるな。『こんな物を出すのか?』って言う奴までいるから、結局焼き魚を出すことが多くなってる」

「そうなのですね。なるべく抵抗がなく、でも王都では食べられないような魚料理……」

「それにしてもお嬢様、なかなか難題ですね。新鮮だからこそ、ここで生魚が食べられると言うのに」

「本当、我が儘言わないで欲しいわよね。さて、どうしようかしら」


 そう言って、前世の料理を思い出しながら市場を見渡す。そこにはマリン帝国から輸入したオリーブオイルや、艶々のトマトも並んでいた。


「あ、一品目はアクアパッツァにしましょう!!」

「アクアパッツァとは何ですか?」
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