婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「魚をオリーブオイルやニンニクでソテーして、ワインやトマト、貝類と一緒に煮るの。魚の旨みがしっかり出るし、パンに浸して食べても美味しいわ。他には何にしようかしら……」
「いや〜〜お嬢ちゃん、料理に詳しいんだな!」
「お嬢ちゃんではなく、“エリアナ様“とお呼びください!」
「おっ、おう……」
アクアパッツァとパンだけでも十分かもしれないが、せっかく新鮮な魚介類があるのだ。他にも色々と試したくなってしまった。
市場を再度見渡すと、先ほどのトマトとオリーブだけでなく、他の街から取り寄せたチーズや、なんとお米まで発見した。
「まぁ! コムギだけじゃなくて、ここにはライスもあるのね! よし、決めたわ。カプレーゼとパエリアも追加しましょう!!」
「カプレーゼにパエリア?? 先ほどのアクアなんちゃらとは違うのかい?」
「えぇ! でも、どれもとっても美味しいので、楽しみにしていてくださいね!」
「そうか、あ、そうだお嬢ちゃん。じゃなくて、エリアナ様」
『お嬢ちゃん』と言った瞬間、ギロっとケイティに睨まれた宿屋の主人はすぐに訂正した。
「最近この辺も瘴気が広がっていて、海の生き物もその影響を受けているのか、市場のものを生で食べて体調を崩している人も出始めてるんだ。
王太子殿下にそんな食材で食べさせて大丈夫か? 他の地域の野菜とかにした方が良いかな、と思い始めたんだが……」
「まぁ、そのような影響が出ているのですね!? 今回は火を通す料理なので大丈夫かと思いますが……体調を崩された方々が心配ですね」
(海を挟んで向こう側にはマリン帝国もあるのに、大丈夫なのかしら)