婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

 想定以上に被害が広がっているのだと思うと、焦る気持ちが湧き上がる。でも、私には料理を作るくらいしか出来ない。

 最近はなぜか魔力が増しているような気がしているけど、それもたまたまかもしれないし。


「ご主人、火を通す料理であれば、まだ皆さん食べられるんですよね?」

「あぁ、体調を崩しているのは生魚のまま食べた奴だけだな。今の所」

「王太子殿下がこちらに来るまでもし時間があれば、街の皆さんにご飯を振る舞えたりしないでしょうか?」

「えぇっ!? そりゃあ声を掛ければ、皆すぐに集まってくると思うけど……本当にやるのか?」

「私が作るご飯、体調を崩した方も食べると元気が出るってお墨付きなんです」


 ニコリと笑顔を向ける。先ほど初めて出会ったばかりで、どこまで信用して良いんだろうと思ったに違いない。でも、この状況を少しでも良くしてくれるなら、と考えたようだ。


「確かに、最近は体調を崩す奴もチラホラ出てきて、市場の活気が半減しちまったんだよなぁ。
 景気付けに美味しいものが食べられるなら、みんな嬉しいよなっ。よし、俺も一肌脱ごう! 宿の一部を、宿泊客以外も飲食できるよう解放するよ」

「ありがとうございます! 今用意できるのは先ほどお伝えした3品くらいですが……まずはそれらを試作する所から始めましょう!
 あ、ご主人、お名前を聞いておらず失礼しました。今伺っても?」

「あぁ、俺の名前はジャンだ。宜しくな、エリアナ様」

「あら、エリアナで構いませんわ。ねぇ、ケイティ?」

「お嬢様がそうおっしゃるなら……」
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