婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

第14話:クリス王太子の突撃

 王太子殿下一団が宿に到着した。

 ジャンさんが対応に追われているが、私が料理人として表に出ることはないよう手筈を整えている。一応、この宿には料理人が二人いるので、もし呼ばれるようなことがあっても大丈夫だろう。


「お嬢様、昨日お出ししたメニューと同じものを振る舞うのですよね?」

「えぇ、ディナーにお出しするわ。何も問題ないと良いのだけれど……」


 その後、用意していたカプレーゼ、アクアパッツァ、パエリアを出していく。聖女マリア様にはレモネードを、男性陣はお酒が良いとのことで白ワインを合わせて提供した。

 ディナーの途中で抜けてきたジャンさんが、私たちに声をかけてくれた。


「エリアナ嬢! 皆さんすごく喜んでくれているよ! 料理人はどんな人なのか聞かれたけど、レシピを伝授してもらっただけだと伝えてあるから。
 ひとまず満足したようだし、明日以降は王家の専属料理人が対応してくれるそうだ。じゃあ、一旦戻るよ」

「ジャンさん、ありがとうございます! では、明日以降こちらを使えるよう、少し片付けておきますね」

「あぁ、恩に着るよ!」


 ジャンさんの報告を聞いてホッとした私たちは、少し気が抜けていたかもしれない。

 宿の料理人の二人も含めて、他愛のない話をしながら食器や食材を片付けていた。


「お二人は体調不良などにはなっていないですか?」

「俺たちは特に問題ないですよ。でも、最近海で大きな影を見たっていう奴がいて……もしかしたら魔獣なんじゃないかって噂になってますね。なぁ、お前も聞いただろう?」
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