婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
 次の日の朝。お父様、お母様、レオンを始め、エンフィールド家の使用人達が見送りのために並んでいた。


「お父様、お母様、ご迷惑をおかけして申し訳ございません。暫くの間、行って参ります。レオン、エンフィールド家のことは任せましたよ」

「エリアナ……何もこんなに急いで行かなくても」

「いえ、何ごとも早い方が良いですわ」

「そうだエリアナ、調理器具まで沢山持っていくと聞いたが、お前は料理をするのか?」

「はい! 以前からずっと料理がしたいと思っていたんです。当分はケイティと私の二人だけですし、私も出来ることは全てやりますわ」


(本当は、前世の食事を再現して、美味しいものを食べたいだけなのだけど……)


 私の発言が『健気なお嬢様』とでも見えたのか、涙ぐんでいる使用人までいる。本来は使用人がやるようなことを、令嬢の私がやると言うのが可哀想なのかもしれない。

 でも、前世では炊事・洗濯といった家事全般が好きだった私にとっては何ら苦ではなかった。


「それでは、行って参ります!」


 私とケイティは馬車に乗り、目的地に移動し始めた。馬車の中で、私はケイティに話しかける。


「ケイティ、あなたまで巻き込んでしまってごめんなさいね。きっとこれまで以上に苦労をかけると思うの……」

「いえ、とんでもないです! むしろお嬢様とご一緒できて、私はとても嬉しいんですよ! それに、殿下がまさかお嬢様に婚約破棄をなさるなんて、もうずっと腹が立って仕方がないです!」

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