婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
「お嬢様、お二人で戦えばいけるかもしれないですね! それに、あのレオナルド様ですし! 10人馬力くらいは出せるのではないでしょうかっ」
興奮した様子のケイティを見ると、その視線の先でクリス様とばっちり目が合ってしまった。
「エリアナっ!? 君はこんな所で何をしているんだ! いや、ここは私がどうにかするから、早く逃げるんだ」
「え? クリス様の火魔法ではかなり分が悪いのでは……」
その言葉も聞こえていなかったのかもしれない。なぜかクリス様は魔獣に突進していき、強力な火魔法を放った。
轟々と音を立て、タコのような魔獣が少し焼けたようになっている。
でも、すぐに海に潜り、再浮上してきた。そして墨のようなものをひたすら吐いている。
「なるほど……クリス様はたこ焼きにでもしようとしたのかしら? それにしても、なんでこんな無茶な戦い方を!?」
「お嬢様、『たこ焼き』が何かわからないのですが……! 殿下は、エリアナ様に良い所を見せたかったのだと思います!」
「え!私に? でも、そんなことをして、何の意味があるの?」
「それは、まだエリアナ様のことをお慕いしているからですよ!!」
「……えぇぇぇえ!?」
作戦も無いまま突っ込んでいったクリス様を前にして、『この国の未来は大丈夫なのだろうか……』と一抹の不安を覚えた。
そんな中、アンディと騎士団長のレオナルド様が息を合わせて、雷魔法で攻撃を重ねていく。隣にいたケイティは、アンディの姿を惚れ惚れとした様子で見届けていた。
(フフッ ケイティったら。やっぱりアンディのことが好きなのね? あら……あの人だかりは)