婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される
第15話:クリス王太子からの誘い
「カイ殿、全体の指揮、見事だった。まぁ、私でも出来たのだが」
突然話しかけてきたのはクリス様だった。クリス様の隣には、マリア様も一緒にいる。
若干、自分が指揮できなかったことへの当てつけというか、皮肉混じりにも聞こえたのは気のせいだろうか……。
「いえ、殿下も駆けつけて下さってありがとうございます。皆さんのお陰で無事退治できました」
カイ様はクリス様の皮肉も笑顔で躱す。感謝の言葉まで伝えられるんだから、大人な対応だなと感心してしまった。
「以前カイ殿は瘴気の調査をしていると言っていたが、次はどこに行く予定なんだ?」
「我々は魔獣の王が住む魔窟に向かおうと思っています。ね、エリアナ?」
「はい」
「……我々もその予定なのだが。それにしても、なぜ毎回行く先が一緒なのだろうか? グラニットはまだしも、ドルフ村も、この街メーアでも、ましてや魔窟に向かうタイミングまで同じだなんて。
まるでこの先何が起こるのか把握しているようだな」
クリス様の発言で『ぎくぅっ』と心中冷や汗が止まらない。
私は乙女ゲームのシナリオ通りに動いているから、『この先何が起こるのか』を把握しているのは正しいからだ。
カイ様は、普通であれば信じ難いことを平然と告げた。
「我々は、エリアナが夢の中で見た魔獣の出現場所に合わせて行動しています。
実際にその通りに魔獣が現れていますし、闇雲に動くよりは信憑性が高いと判断しました。
以前、殿下に『エリアナ嬢が料理に目覚めたそうで、各地を旅していると言っていました』と言うのは、嘘ではありません。現に各地で彼女は料理を振る舞っておりますので」