婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

「そうか、それにしても夢でのお告げか……」

 クリス様が怪しむように私を見ている。隣にいたマリア様がピンときたような顔で、私に話しかけてきた。


「エリアナ様! 次の場所に移動する前に、二人でお茶をしませんか? 料理についても伺いたいですし、私達もこの後魔窟に向かいますので、協力し合った方が良いと思うんです!」

「え、えぇ……もちろんですわ?」


 マリア様に何を聞かれるのか、不安が無いと言ったら嘘になるが。私の料理に『胃袋を掴まれた』と言っていたような人だ。きっと大丈夫だろうと思い、後日二人で会う約束を交わした。


***


 後日。
 ジャンさんの宿の料理人と仲良くなっていた私は、キッチンの一部を借りてレモンのパウンドケーキを作っていた。

 出来上がったケーキと紅茶を持って、マリア様のもとへ向かう。


「わぁ! レモンのケーキですか? 輪切りにしたレモンピールまで!」

「えぇ、是非召し上がっていただきたくて。作ってしまいました」


 感激するマリア様。ここまで喜んでもらえると、作った者としてはとても嬉しい。「待ちきれない!」とばかりに早速食べ始めると、「美味しい〜!!」と絶賛してくれた。そして……


「エリアナ様って、異世界転生者ですよね?」


 あぁ、やっぱり今日の本題はそれか、と思った。でも、ゲームでは脇役令嬢なのだから、特に隠す必要も無いのかなと感じていた。


「マリア様には分かってしまいますよね。はい、少し前に思い出したばかりなのですが、前世は『高梨えりな』という名前の日本人でした」
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