婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

「わぁ! やっぱり!! パエリアやカプレーゼ、このレモンケーキも。この国では食べたことがないものばかりで、魔獣が出る場所も把握しているというのが繋がって、もしや……と思いました! 改めまして、私は佐々木麻里亜です!」


 佐々木麻里亜さんことマリア様は、この世界にどうやって来たのか、これまでどれだけ心細かったかなど、喋り続けた。

 そして、大好きな乙女ゲームの話になるとさらにヒートアップしていく。私もプレイしていた、というのが余計それを助長したのかもしれない。


「私、『聖女マリアと魔法の国』が本当に大好きで。主人公の名前が自分と一緒、というのも親近感が湧いた理由かもしれません。
 音楽もイラストも、世界観も最高ですよね! あ、ちなみにエリアナ様は誰推しだったんですか?」

「え!? えぇっと、私は箱推しというか、特定の誰かを推してた訳じゃなく……」


 ここは騎士団長のレオナルド様、と言うべきか悩んだが、もしマリア様がレオナルド様推しだとややこしくなる。敢えて黙っておいた。


「えーっ! 特定の『誰推し』を語るのが楽しいんじゃないですか!
 私は神官のアンジェロ様なんですけど、私に聖女の力が無いからか全然好感度が上がらなくて……でも! 推しは見れるだけでも尊い! と思うことにしました」

「え!? クリス様では無いのですか!?」


 つい大きな声を出してしまう。
 あ、ここには王太子殿下一団が宿泊していて、今は皆さん執務中だった……。


「あ、そうですよね……エリアナ様から奪い取るような形になってしまったのに、アンジェロ様推しだなんて失礼ですよね……」
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