ハロウィンの悪魔



すぐ近くにいたのに全く気付かなかったが、それより信頼されていると思っていた人に内心見下されていたのかと思うと、それまで満ち満ちていた怒りが急に悲しみへと変わった。

思わずグッと唇を噛み締めたが、界斗は予想外な事を言った。


「お前が仕事できないって事は分かった」
「は?」


そう言う界斗は淡々としており、その男に視線を向ける事なく続ける。


「大した事ない書類なんだろ?それすら完璧にできないってのはそういう事じゃないのか」
「…いや、俺が言いたいのはそう言う事じゃなくて」


界斗は特に怒っている様子でもない。
けれどその言葉には言い得ぬ圧力があった。



「あと疑問なんだが、仕事の出来不出来に容姿の良し悪しは関係あるのか?それなら、お前が貶した朝比奈さんは誰が見ても優秀な人だが、それはどうしてなんだ?」



界斗の至極真っ当な意見に、男はすっかり黙り込んでしまった。





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