ハロウィンの悪魔
栞は目の前に立つ男の姿にガタガタと体を震わせていた。
それがまさかのハロウィンの夜に一夜を共にした男であり、楓の会社に出向してきた男だったからだ。
御堂界斗、栞の務める会社の親会社にあたる本社の専務の息子だ。
楓の会社は全国展開をしている大手電機メーカーで、彼女が在籍しているのはその子会社の経理部。
界斗を挨拶の為と連れてきた彼の上司が言うには、この度様々な経験を積む為この子会社の営業部へと出向してきたそうだ。
ーーーどどど、どうしよう…!
本社の専務の息子に手を出してしまった恐怖からいつものパフォーマンスが出来ない。
先程からタイピングミスをするは計算が合わないわ、挙げ句の果てにはファイリングしたと思っていた書類を盛大に床にばら撒いてしまった。