ハロウィンの悪魔





結婚についてはいつかできたらいいなぐらいには思っているが、会社にも未婚のまま前線で生き生きと働く先輩方がいるので、その時はその時だとも思っている。


「朝比奈さん」


意識を戻し呼ばれた方を見れば、見知った女性の先輩が自分を呼んでいる。
その隣には界斗もいた。

どうやら彼女が界斗の教育係に任命されたらしい。


栞が席を立ち二人の立つカウンターまで向かうと「この人が朝比奈さんね」と先輩が自分を紹介した。

この先輩は既婚で面倒見が良く、仕事ができる栞を同性であることもあってか色眼鏡無しで気に入ってくれている。


ぎこちなく「よろしくお願いします」と挨拶をすれば、こちらこそと軽く頭を下げてきた。


「ここだけの話、朝比奈さんが一番早く丁寧に対応してくれるから、何か分からないことあれば彼女に聞けばいいよ」
「分かりました」


あの熱い夜が嘘のようにスンと表情の乏しい界斗はそう素っ気なく言った。

これは全く気付いてない、そう直感的に感じた。


その事実に安心し、二人が経理部を去ると栞はようやく落ち着きを取り戻し、以降は仕事に専念することができるようになった。







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