ハロウィンの悪魔

界斗らしからぬ乱暴な扱いに戸惑いつつも、頭の中では必死に言い訳を並べ立てていた。

けれどどんなに思考を巡らせても上手い言葉は見つからず、ただただ無言の空間だけがそこにあった。



「こ、これは…」


言い訳をするくらいならもういっそ全部話して謝ってしまおうと口を開いた時、それを遮るように言葉を重ねてきた。


「誰に何を言われた」
「…へ？」
「目が腫れてる。泣いてたんだろ？お前が会社で泣くなんてよっぽどだ、何を言われた」


界斗が何を言っているのかよく分からなかった。

けれど自分を見つめる瞳は確かに怒気を含んでいて、何処にも存在しないものに対して怒りを向けていた。



「…な、なんで何も言わないんですか」
「？何をだ」
「だって私、この目、ずっと嘘ついて…」


その先を言うのが憚られ、栞は言葉を濁しながら目元に手を当てた。

この左右非対称な赤い目を見れば、直ぐに栞が嘘をついて界斗を騙していたと分かるはずだ。